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遺稿集

房子・・・
かぎりある命を偲んで・・・
肝臓がんと過ごした日々

著者 / 吉田勲
サイズ:四六判
製本:ソフトカバー
ページ数:162ページ(カラー+モノクロ)
発行日:2009年9月1日
内容紹介(一部)

♪タ〜タララララララララン・タ〜ララ♪

「男はつらいよ」のオープニングテーマが響きました。私の携帯電話の着メロです。見知らぬ番号からの着信でした。
「同愛病院ですが、吉田房子様のご主人ですか。実は房子様のご病状について、ご説明したいことがありまして・・・。ご都合は・・・」

平成十八年九月六日のことでした。私はひとりで病院に行き、病院のK先生と向き合いました。K先生は、女性の方でした。
「奥様には、一応告知はしましたが・・・」
肝臓の断層写真を示しながら、
「肝臓の左葉に大きな腫瘍と、右葉には小さな腫瘍が数個、恐らく癌だと思います」
頭が真っ白に、そして顔から血の気が引いていくのが自分でも分かりました。
「それで入院していただいて、詳しく検査を」
 八月の終わり頃、腹部にしこりを発見し、脂肪の固まりかなぁぐらいに思っていました。しかし、「家庭の医学」という本で調べると、あまり良いことが書いてないので、すぐに病院へ行ったのでした。それが九月一日で、それから五日後のことでした。まだ、夏の日差しの残るきびしい日であったと記憶しております。

職場から自宅までの間、さまざまな事が頭をかけ巡りました。

―どんな顔をして、房子の顔を見たらいいのか・・・。

―子供たちに何と言えばいいのか・・・。

―これから自分は、どうしたらいいのか・・・。

自転車で十分位の道のりです。時間の感覚を認識していませんでしたが、否が応にも家には着きます。房子は、私が病院に呼ばれて病状のことを聞いているとは知りません。

房子は言いました。
「お父ちゃんゴメン。私、だめかもしれない」
「何が?」私はとぼけました。
「がんだって・・・」
そばには子供たちが居ます。察するに、話は先にしていたみたいでした。中学二年生の双子の二人は、がんとは、どのような病気なのか理解はしているようでした。平静を装いながら
「本当に? 大丈夫、心配するなよ、何とかなるよ。」
―これが私の精一杯の言葉でした・・・何が大丈夫なのだ・・・心配するなと言っても無理だし、何とかなるとは、どうなるのか・・・。

その時、房子は私に対して申し訳ないという気持ちと、病気に対する不安とで、言葉では到底表わすことのできない哀しい表情をしていました。私はそれを決して忘れることはないでしょう。