小説 | 徒然草の断編 三ケ木屋一家の物語

書籍画像「三ケ木屋一家の物語」

著 / 三浦孝明

  • サイズ:四六判(W127xH188mm)
  • 製本:ソフトカバー
  • ページ数:174ページ
  • 発行日:2018年9月8日
  • 価格:1,500円(+消費税)
  • ISBN:978-4-907446-75-8
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内容紹介(一部)

第一章 栗娘

六月も近いというのに気温は冬のように低く、雨はいっこうに降らなかった。苗の育ちが不十分な上に旱魃にあった稲の生育は異常なほど遅れていた。

「小満というのにこの寒さじゃ。栗も花付きが悪く結毬も少なくなるだろうから、秋の実りも期待できぬであろうよ」

伯耆の国の守護代糟谷重行に仕える三ケ木屋輔智は心配そうに空を見上げて呟いた。

帝が変わってからというもの、京やその付近一帯は地震や冷害に見舞われ、田畑は赤土となり稲や野菜も育たなくなってしまったのである。

輔智の関心は穀物や野菜の作柄に留まらず、一年分の栗をどのようにして手に入れておくのかということも悩みの種であったが、それには理由があった。

(以下略)

第二章 修行

市の賑わいの中を、粗末な小袖姿の阿古が常念に伴われて、米、野菜などを扱う店を覗きながら歩いていた。

「料理を学ぶ前に、どのような食材がどうすれば手に入るのかをよく心得ておかねばなりませんぞ。今日は市が立つ日ですから食材を見て回りましょう。それにつけても、阿古殿のような立派なお姿では、あまりにも目立ちすぎて市の中を歩き回ることができませんな。どのような場所にもそれに相応しい姿があるものですよ」

常念の忠告に従って、乳母が探して来た着古しの小袖姿で市にやって来たのである。

川岸に着けられた小舟から、男達が重そうな荷を担ぎ上げ、川沿いに設けられた店先に運んでいた。

「あれは、米を店に運び込んでいるのだよ。店先の筵の上に広げて置いてあるのが米だ。米は傍らに置いてある桝というもので量りとり、桝一杯当たりの値段を基準として必要な量を買うことができるのだよ」

その話に興味を持った阿古は、

「お値段は誰が決めるのですか」

と、常念に聞いてみた。

(以下略)

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