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小説

或る完成

文 / 阿部恭二
サイズ:四六判
製本:ハードカバー
ページ数:132ページ、モノクロ
発行日:2012年4月20日
価格:1,000円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-41-6
販売終了しました。
内容紹介(一部②)
Ⅰ ポッポとチッチ

「よく来てくれたね。あなたが来てくれたから、
ほら、ポッポやチッチも大はしゃぎ」彼女はそう言って、
番のセキセイインコが入った鳥かごをテーブルの上に置いた。

セキセイインコは、二羽とも淡い青緑の、
水彩絵の具を散らしたような色をしていたが、
身体の大きさがやや違った。
小さいのを〈ポッポ〉、大きいほうを〈チッチ〉と呼んだ。
二羽とも彼女の言葉どおりひどく興奮していて、
狭いかごの中でせわしなく羽をばたつかせている。

彼はあらためて部屋の中を見回し、息を呑んだ。
何体もの鳥や獣の剥製がガラスケースに収められ、
あるいは剥き出しのまま所狭しと置かれた異様な部屋だ。
それらの鳥や獣は、ただ単に動かず騒がずにいるだけで、
じっと息を潜めている気がした。気配や眼の輝きを感じた。
それら動かず騒がずのものに囲まれ、
二羽のインコの羽ばたきは不思議に見え聞こえた。
けれどもそれより不思議だったのは、眼の前にいる彼女のほうだ。

「それ、なぁに?」甘えるように片手を差し出し、彼女は訊いた。
彼女は、眼をうろうろさせている彼の、
持て余したような手の下にある文庫本を見ていた。

彼は慌てて、自分でもそれとわかるほど素っ頓狂な声を上げて訊き返した。
慌てたのは、手持ち無沙汰だろうと持ってきた『夢判断』とは関係がない。
田舎の兄から贈られた腕時計の行方を、なぜか急に思い出したからだ。
腕時計は画材道具を買うために、アパートの近くの質屋に入れていたのだ。
『夢判断』で左手首を隠すようにして彼は答えた。

(以下略)