エッセイ&書評本 | 刻舟の記 ─ Essays & Book Reviews ─

書籍画像「刻舟の記 ─ Essays & Book Reviews ─」

著 / 野口宣也

  • サイズ:B5判(H257xW182mm)
  • 製本:ソフトカバー
  • ページ数:358ページ
  • 発行日:2019年12月31日
  • 価格:2,500円(+消費税)
  • ISBN:978-4-910118-01-7
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内容紹介(一部)

刻舟の記 ─ Essays & Book Reviews ─ はしがき

六十年以上昔になるが、私がまだ中学生だったとき、漢文の授業で「刻舟求剣」という寓話を知った。呂氏春秋という古い本に出てくる短い話だ。
『楚の人で長江を舟で渡る者がいた。その剣が川に落ちた。すると舟端に目印を刻んで「わしの剣が落ちたのはここだ」と言った。やがて舟が岸に着いた。彼は舟端の目印から剣を探したが、見つからなかった。』これは自分の狭い経験にこだわる愚かしさを嘲笑する話である。

この話は私の記憶の底に沈んだが、いつごろからか違う考え方をするようになった。私たちは生きていくうえで色々な出来事に出逢う。その節目で、自分の大事なものを得たり失くしたりすることが多い。そんなとき、無意識のうちに、この寓話の主人公に似て、自分の狭い経験にこだわるふるまいを重ねているのではないか。そうだとすれば、この主人公を自分と無縁な愚かしい人物として嘲笑することは、到底できない。

(以下略)

パキスタンという国

1. 古くて新しい国

パキスタンは古くて新しい国である。パキスタン回教共和国として独立したのは、1974年であるが、この地域の歴史は気が遠くなるほど古い。有名なモヘンジョダロやハラッパなどの古代都市文明は、この国を縦断して流れるインダス河の流域に興った。アレクサンダー大王の遠征がもたらしたヘレニズムの影響はガンダーラ文化を生み、その中心は現在の首都イスラマバードに近いタキシラであったといわれる。仏教はガンダーラの地で栄えた後、西域・中国を経由して日本に渡来した。いわばこの地は日本仏教のはるかな故郷である。もっとも、現在この国に仏教徒は数百人しかいないといわれる。

(以下略)

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