自分史 | 子連れ欧米留学に始まる60年

書籍画像「子連れ欧米留学に始まる60年」

著 / 今井昭一

  • サイズ:A5判
  • 製本:ハードカバー
  • ページ数:226ページ
  • 発行日:2019年10月25日

内容紹介(一部)

ドイツ留学

(前略)

さて、留学が決まって、旅券を申請したら、公用旅券の場合、行先はドイツ連邦共和国だけになるという。幸い、仕事の関係で文通を続けていたチェコスロヴァキアBrnoの大学のProf Krutaにドイツ留学のご挨拶の手紙を差し上げたら、大学に寄って行けと招待状を送って下さった。そこで、南回りの飛行機を使って、イタリヤ、スイスを経由してチェコに行き、オーストリア経由でミュンヘンへという案を考え、行き先に、経由国として、イタリヤ、スイス、オーストリアを加えて貰った。それでも、ドイツまで行きながら隣国のフランスはもちろん、イギリスにもオランダにも行けないと嘆いていたら、ボンの大使館に出頭すれば、ギリシャ以西の非共産圏は、その場で行き先に加えて貰える事がわかったので、ドイツ大使館が留学生をボンに招待してくれた機会に、早速、大使館に赴いて行き先の追加をして貰った。

(以下略)

蓼科登山に思うこと

正直に言って今度の蓼科登山はかなり手強かった。あの和やかな山容からはとても想像できぬような困難が今度の登山にはあった。

蓼科の登りがジグザクなど一つもない馬鹿正直な急登であることは、案内書に一様に書かれているし、既に登頂した幾たりかの友人が異口同音に語るところであった。そして事実もたしかにそうで
あった。しかし美しい林の中につけられた急坂をあえぎあえぎ登る事はそれ程負担に感じられなかった。急坂を登るきついアルバイトには、一歩毎に開けて行く雄大な景色を見る喜びが、立派に償いをつけてなお余りあったし、久しぶりに肉体を動かす喜びも随伴していた。肉体の快い疲労の中に精神は受け身の感動に浸り切っていた。困難はむしろ下りにあった。本当の意味で精神をめざめさせ、その持てる力をフルに働かせたのは登頂の後であった。

(以下略)

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